食道がんの治療

食道がんのステージと治療の選択

食道がんの治療には内視鏡治療手術治療放射線療法薬物療法(化学療法)の4つがあり、それぞれの治療法の特徴を生かしながら、単独あるいは組み合わせた治療を行います。
どの治療を選択するかについては【図15】に示すがんの病期、すなわち臨床的進行度(ステージ)により決定されます。

ステージは、がんの浸潤の深さである深達度(Tで表します)、リンパ節転移の有無と有る場合はその個数(Nで表します)、肺や肝臓などの遠隔臓器転移(Mで表します)の有無によって決められています。ただし、患者さんの全身状態や希望などにより、同じステージでも異なる治療法を選択することもあります。治療法の選択には、患者さん、ご家族、主治医でよく相談して決めることが大切です。

図15:食道がんの進行度(ステージ)分類 日本食道学会編「臨床・病理食道癌取扱規約第12版(2022年)」(金原出版)より作成

図15:食道がんの進行度(ステージ)分類 日本食道学会編「臨床・病理食道癌取扱規約第12版(2022年)」(金原出版)より作成

1)ステージ0期、Ⅰ期食道がんに対する治療選択【図16】

ステージ0期、I期の食道がんの治療方針は内視鏡検査CT検査PET検査などにより、深達度診断、転移診断を行って決定されますが、特に内視鏡検査による壁深達度評価が重要です。すなわち深達度が粘膜にとどまる(T1a)か粘膜下層に達する(T1b)かにより初回治療法が異なり、T1aがんでは内視鏡的切除が、T1bがんでは手術化学放射線療法放射線治療と化学療法を併用する治療法)が治療の中心となってくるからです。

またT1aのがんであっても、病変が広く、内視鏡切除後に食道が細くなる(狭窄と言います)可能性がある場合は、手術化学放射線療法を行うことがあります。また、検査で粘膜にとどまると判断して内視鏡治療を行った後、病理組織検査で粘膜より深く浸潤している場合には、手術化学放射線療法などの追加治療が行われることがあります。

図16:ステージ0期、Ⅰ期食道がんに対する治療選択

図16:ステージ0期、Ⅰ期食道がんに対する治療選択

2)ステージⅡ期、Ⅲ期食道がんに対する治療選択【図17】

ステージII期、III期に対する治療は、治療前に全身状態を調べて、手術できる状態であれば、手術治療が第一選択となります。特に、手術可能と判断した場合、手術前に化学療法を行って手術を行うのが標準治療とされています。

手術を先行した場合は、切除標本の病理組織検査で、特にリンパ節転移の有無を診断し、転移がある場合は術後化学療法を検討します。手術不可能あるいは手術を希望されない場合は、化学放射線療法放射線治療薬物療法の単独治療を行います。

図17:ステージⅡ期、Ⅲ期食道がんに対する治療選択

図17:ステージⅡ期、Ⅲ期食道がんに対する治療選択

3)ステージⅣ期食道がんに対する治療選択【図18】

ステージIV期食道がんではIVa期では化学放射線療法が、またIVb期では化学療法が標準治療とされています。しかしステージIV期の場合は、がんの進行度診断とあわせて、患者さんの元気さを表す指標である、パフォーマンスステータス(PS)の評価が極めて大切です。PSは0から4までに分類されますが、0が全く問題なく日常生活を行えることを示し、4がまったく動けない、身の回りのことが自分でできない場合を意味します。PSが良好であれば標準治療を行うことが多いですが、不良な場合は緩和的対症療法が中心となります。

図18:ステージIV期食道がんに対する治療選択

図18:ステージIV期食道がんに対する治療選択

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