理事長挨拶

日本食道学会理事長 竹内 裕也
日本食道学会理事長
竹内 裕也

2023年6月30日、日本食道学会の理事長を拝命いたしました
浜松医科大学 竹内裕也と申します。関係の皆様には心より御礼申し上げます。

浅学菲才の身ではございますが、本学会の発展はもとより、食道疾患を抱える患者さんとそのご家族、さらにはわが国の医療と福祉に貢献すべく精進いたしますので、ご支援、ご指導の程宜しくお願い申し上げます。

食道の病気を抱えた患者さん、ご家族の方、一般市民の方々へ

日本食道学会は、食道がんや逆流性食道炎、食道裂孔ヘルニアなど、良性・悪性を問わず広く食道の病気を扱う学術団体です。食道の病気を専門とする外科、内科、放射線科、病理、基礎医学などの医師や看護師・管理栄養師などのメディカルスタッフが集まり、食道の病気について最新の診断・治療法を国内外に発信する活動を行っております。

食道がんについて、日本食道学会は食道癌診療ガイドラインや食道癌取扱い規約を作成し、わが国の食道がん診療のレベルアップや標準化に大きく貢献してきました。食道がんは、胃がんや大腸がんに比べると患者さんの数が少なく治りにくい病気であること、手術や術後管理に加えて放射線療法や薬物療法(抗がん剤や免疫療法)が専門的であること、多職種を交えたチーム医療が必要であることなどから、食道がん診療の経験豊富な病院で治療を受けられることをお勧めしています。日本食道学会では皆さんが日本全体で安心して食道がん治療を受けられるように専門施設を認定し、食道疾患のエキスパート(食道科認定医)、食道がん手術のエキスパート(食道外科専門医)を認定しています。それぞれの情報は本学会ホームページ(一般向けサイト)に記載されておりますので、皆様が医療機関を受診されるときの一助として是非ご活用ください。本学会ホームページの「食道がんを正しく知ろう!」には食道がんの診断・治療について患者さんやご家族、一般の方向けにわかりやすく書かれております。また学会公式YouTubeチャンネル や市民公開講座も行っておりますので、これらの活動を通じて多くの方々に食道がんの正しい情報が広がっていくように努めてまいります。

わが国の食道がんの治療成績は常に世界のトップクラスで、日本の内視鏡、手術、薬物療法、放射線療法それぞれの治療レベルは世界最高と言っても過言ではありません。今後もさらに食道がんの治療成績を向上させることで、一人でも多くの患者さんの病を治し、お元気に過ごされるように、そしてわが国だけではなく世界中の患者さんに貢献できるように努力いたします。

食道良性疾患としては、胸やけなどの症状を有する逆流性食道炎や食道裂孔ヘルニアが代表的です。治療は薬物療法が中心ですが、手術療法が行われることもあります。逆流性食道炎から食道がんが発生することもあり大きな問題になっています。また、食事がつかえやすくなるアカラシアという、比較的まれですが難治性の病気があります。アカラシアは手術療法が中心ですが最近では内視鏡治療も行われるようになってきました。このように良性の食道疾患に対しても、内科と外科が協力して最善の治療を行えるように、日本食道学会が中心的にまとめ役を担っています。

これからも皆様が日本食道学会からの情報発信を活用して、より良い治療が受けられるようにしてまいります。

日本食道学会員、および医療関係者の皆様へ

このたび幕内博康先生、安藤暢敏先生、松原久裕先生、土岐祐一郎先生に続き、5代目の理事長を拝命いたしました。大変光栄であると同時に、その重責に身の引き締まる思いです。輝かしい歴史と伝統を誇る日本食道学会をさらに発展させるべく、微力ではございますが尽力してまいります。

ここ数年、食道癌治療はロボット支援手術の普及や免疫療法を含む集学的治療開発により、格段の進歩を遂げつつあります。今後さらにゲノム医療、バイオマーカー研究とAIの活用が進むことで、各病期の定型的な標準治療に個別化治療を組み合わせる時代が到来すると考えられます。日本食道学会は率先してこれらの先進的医療に取り組むとともに、次世代の標準治療開発の礎となる基礎研究、臨床研究を推進することで食道癌治療成績のさらなる向上を目指します。

日本食道学会は食道癌診療ガイドライン、食道癌取扱い規約を作成し、広く食道癌診療に携わる医療職の方に活用していただいております。また食道科認定医、食道外科専門医、食道外科専門医認定施設は広く会員全体に浸透し、近年は手術ビデオ審査の導入などにより更なる充実を図っています。これらの制度を通じて、日本全体の診療レベルアップを伴う均てん化と専門施設への集約化を目指しています。同時に食道癌診療の魅力を学会内外に広めることで、食道癌診療を志す若手医師やメディカルスタッフを増やしていけるように努力いたします。

わが国の食道疾患診療の成績が優れていることは国際的にも認知されていますが、今後さらに学会誌Esophagusのインパクトファクターの向上を通して、日本からの情報発信を積極的に進めてまいります。国際食道疾患会議(ISDE)や東アジア各国との連携も今後さらに深めたいと考えています。

食道癌集学的治療の進歩に伴い、多診療科、多職種で横断的に討論する学術集会はますます重要になっています。また、食道良性疾患や機能性疾患においても診断から治療まで診療科を超えた幅広い知識が要求されます。今後は関連する他学会とも連携を図りながら、会員が良悪性を問わず食道疾患の最新知識を生涯学べる場を提供したいと考えております。

その他にもチーム医療の推進、頭頚部癌や食道胃接合部癌の諸問題、医療安全、働き方改革など本学会の取り組むべき課題は山積しておりますが、これから会員の皆様と一緒に一つ一つ考えてまいりたいと存じます。コロナ禍で疎遠になっていた会員間の交流や親睦も図りつつ、さらに若手会員や女性会員にも積極的に学会運営に携わっていただきながら、活力ある日本食道学会を目指します。

何卒ご支援、ご指導賜りますよう宜しくお願い申し上げます。

2023年7月
日本食道学会理事長
竹内裕也